天国からの電話

「パパの声が聞こえるよ!」
私の所に駆け寄ってきた子供達が突然そんなことを言い出し、ボイスレコーダーを差し出した。
それは夏樹が使っていたものだった。

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えー、今日は3月29日、再手術の朝4時45分です。えー、寛子に送る最後の手紙をまとめるため、えー、また美しいサンライズを見るために、このがんセンター16階のデイルームにいます。
えー、今日は無風でレインボーブリッジの下を流れる隅田川は真っ平らで、今バージ船がその真っ平らな海を走って行き、レインボーブリッジの大きな柱のフラッシュライトがピカッピカッと光っています。
えー、眼下には活気溢れる築地市場があり、たっくさん人々とトラックが今日も働いています。高く積まれた発泡スチロールの山も、もうすでに凄くなってきました。
ここで最後の時を静かに楽しもうかと思いましたけれども、なぜかフラフラとどこかの患者の親父、60くらいの親父がこのデイルームに入ってきて、いきなりベンチに寝そべって、グーグーガーガーひどいいびきを立て始めましたぁ。
えー、僕はここでエリック・クラプトンの「Tears in Heaven」を聞きながら、気持ちよくなろうと思っていましたけれど、人生とはいつも本当にこのようにずっこけたものであると最後まで思いましたぁ。
それでは~。

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『天国で君に逢えたら』を書き終えた後の2004年3月29日の大手術。これはその直前の夏樹の肉声だった。
こんなところにこんな声を残していたとは、全く夏樹らしいが、ホントに驚いた。
何だかとても嬉しい気分。天国の夏樹から突然電話をもらったみたいに。
いろんなものを残してくれて、ありがとう。
でも、まだまだ何か出てきそう。ちょっとワクワク。


飯島寛子

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久しぶりの日本

ここハワイの公立の学校には、秋休みがある。その秋休みを利用して、日本へ行ってきた。
上の子3人は、パパと一緒にハワイへ来て以来初めての帰国。
あれから2年か~。胸がじ~んと熱くなる。たった2年でみんな随分大きくなったなぁと感心した。アメリカと日本と二重国籍の子供達は、日米間に限り2つのパスポートを持って旅行する。だから子供のパスポートだけで8冊にもなる。やれやれ。

でも、荷物も全部子供達がきちんとそれぞれ管理して、てきぱき運んでくれた。
飛行機の中では、修学旅行の日本の女子高生とすっかり仲良くなったヒロゴロ、タマキ。
小夏は、私の横で静かに過ごす。
随分楽になったもんだ。

今回の旅の目的は2つほどあったが、それ以外は秋の味覚を楽しんで、長野の温泉でひと休みし、オープンしたばかりのテーマパーク「キッザニア」で遊び、表参道や憧れの夜のラーメン屋、湘南の海(墓参り)、映画にも行った。
そして、子供たちが一番やりたがっていていた、念願のモトクロス場にも出かけた。
モトクロス場はハワイにもあるが、バイクレンタルがなく、すべて持ち込まなくてはならないので、女所帯では難しい(というより、私はまったく興味がない)。
だから、子供たち、特にヒロゴロは大はしゃぎ。5歳になったタマキもつなぎのライダースーツを着て、ミニコースを走った。

とにかく日本滞在中はやりたいことが盛りだくさんで、ほとんど子供たちと時を楽しんだが、そのせいでハワイに戻ってからはすっかり“日本シック”にかかってしまい、しばらくは大変だった。

今が一番いい時。旅の仕方を教えてくれた夏樹。家族旅行をありがとう。


飯島寛子

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マウイ

先日コナツが、
「マウイでウィンドサーフィンしたい!」とぽそっと呟いた。
「えっ?何て言ったの?」
突然のことで耳を疑いながらも、やっぱり血筋かな? と嬉しくなった。

ちょうど日本から友人がマウイへウィンドサーフィン合宿に来るというのを聞きつけ、
何とかコナツも参加できないか?と頼んでみたらすんなりOK。
その友人と勝手に盛り上がって話を進めていたら、コナツが「一人で行きたくない。ママも一緒に来て。知らない人の中に行くのは嫌!」と半泣き状態になってしまった。くらげに刺されても泣かない我慢強いコナツだけに、心が揺れ動く。子供が親を必要としてくれるのもあと数年だし……、離島への航空運賃は片道$29と安いし……、ヒロゴロタマキを誰かに預けて自分だけ行くのも心配だし……とあれこれ考え、結局みんなで行くことに決めた。

夜中にインターネットでチケットとレンタカーを手配し、翌日ヒロゴロのサッカーの試合が終わってから、ホノルル空港へ直行。
突然のビックニュースにヒロゴロとタマキは、
「わーい! マウイ! ママ、どんな車借りるの?」と大はしゃぎ。
「え? ミニバン? つまらない。せっかくだからJeep! Jeep!」
車好きのヒロゴロが大反対。仕方なく現地レンタカー屋で変更し、Jeepのラングラーを借りた。

マウイに着いてみると、風が強すぎて初心者のコナツには、難しいコンディション。
でも、ウィンドのボードから投げ出されても、海が好きで泳ぎもできるので、恐怖感はないようだ。もともと海嫌い(サメが恐い。潮でかぶれる。)のヒロゴロは、ビーチで格闘技を始めてみたり、ジープのソフトトップを外してみたりと大喜びだ。タマキはマウイに着くなり、昼寝してしまった。

久しぶりのマウイ。
偶然10年ぶりの友達にも会えたし、懐かしいなぁ。
世代は変わるが、相変わらず風は吹き続けるマウイだった。


飯島寛子

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