天国からの電話
「パパの声が聞こえるよ!」
私の所に駆け寄ってきた子供達が突然そんなことを言い出し、ボイスレコーダーを差し出した。
それは夏樹が使っていたものだった。
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えー、今日は3月29日、再手術の朝4時45分です。えー、寛子に送る最後の手紙をまとめるため、えー、また美しいサンライズを見るために、このがんセンター16階のデイルームにいます。
えー、今日は無風でレインボーブリッジの下を流れる隅田川は真っ平らで、今バージ船がその真っ平らな海を走って行き、レインボーブリッジの大きな柱のフラッシュライトがピカッピカッと光っています。
えー、眼下には活気溢れる築地市場があり、たっくさん人々とトラックが今日も働いています。高く積まれた発泡スチロールの山も、もうすでに凄くなってきました。
ここで最後の時を静かに楽しもうかと思いましたけれども、なぜかフラフラとどこかの患者の親父、60くらいの親父がこのデイルームに入ってきて、いきなりベンチに寝そべって、グーグーガーガーひどいいびきを立て始めましたぁ。
えー、僕はここでエリック・クラプトンの「Tears in Heaven」を聞きながら、気持ちよくなろうと思っていましたけれど、人生とはいつも本当にこのようにずっこけたものであると最後まで思いましたぁ。
それでは~。
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『天国で君に逢えたら』を書き終えた後の2004年3月29日の大手術。これはその直前の夏樹の肉声だった。
こんなところにこんな声を残していたとは、全く夏樹らしいが、ホントに驚いた。
何だかとても嬉しい気分。天国の夏樹から突然電話をもらったみたいに。
いろんなものを残してくれて、ありがとう。
でも、まだまだ何か出てきそう。ちょっとワクワク。
飯島寛子
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